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黒田博樹の広島カープ復帰を受けて『決めて断つ』を読んでみた #carp

2014年12月27日,朝起きると Twitter のタイムラインがひとつの話題で持ちきりだった.黒田博樹の広島復帰の話である.そこでどうしても読みたくなったのが,黒田がニューヨーク・ヤンキースで投げ始めた 2012 年に出版された『決めて断つ』だった.

決めて断つ

決めて断つ

去年,書店で前書きだけ読み,2011年オフに一度広島復帰を決断したものの,30分後に「もう少し考えさせてくれ」と言い直した,というエピソードだけ読んだ記憶のあった私は,「ついにこの日が来たか」と,いろんなことを思い巡らせた. なぜ,このタイミングでの広島復帰なのか…本人が口を開かなければ私達は知り得ないけれども,いろんなことに思いを巡らせる,その材料として,書店に走り,買ってきて一気に読みふけったので,そのレビューを.以下,私のブクログの引用です.

以前書店で前書きのみ読んで購入を見送ったが,広島カープ復帰決定報道を受けて購入,即読了.

今回の黒田の広島復帰が「チーム愛やカープへの恩義のため」であるにせよ,なぜこのタイミングなのかを推察したり,
広島での2015年を過ごす黒田博樹に何が待ち受けているのかに想像を巡らせるのには十分な内容になっている.

黒田は,他の多くの野球選手と違い,「プロになるまでずーっと一線級の世界で戦ってきた」選手ではないことが,本の冒頭で明かされる.
上宮高校では3年間補欠でグラウンドを走らされる毎日,そこからセレクションの受験を通じて入学した専修大学にて少しずつ戦いの世界を広げ,
プロでも着実に1歩ずつ階段を登ってきた選手であった.
その階段の先でプロ野球からもう一歩上にある世界として巡りあったメジャーリーグという世界に身を投じたことが綴られている.

2014年12月の広島復帰報道でも,「MLB からの 20 億円というオファーを蹴って,年俸4億の広島を選んだ」ことが話題となっているが,
ドジャース入団時も黒田は,4年契約を提示されたところを3年契約にするよう願い出たことが書かれており,ある意味「今更驚くことではない」ことが分かる.
ここらへんの決断の根拠もしっかり書いてある点が,この本の評価されるべき点だと思う.
また,翻って,なぜこのタイミングで MLB ではなく NPB でプレーしようという決断に至ったのか,非常に大きな興味が湧いてくる.

また,メジャーリーグで生き抜くにあたって,考え方の転換を図った話も非常に興味深い.
メジャーでは 1 試合を投げ抜くことよりも先発ローテーションを着実に守ることが重要視され,黒田も完投へのこだわりを捨てた.
こういう話はもう日本でも有名だし, NPBMLB の野球の違いは素人も話はよく知っていることだ.
驚かされるのは,中 4 日というハードスケジュールを乗り切るために,「練習で技術の不安を払拭することをやめた」という話だ.
日本では練習で技術的な不安を完全に取り除いて試合に臨もうとしていたが,それでは体力が持たないため,
試合前と試合2日前ののブルペンでの投球は 36 球まで,と決めたというのだ.

野球のルールや仕組みの話なら,投球回数や球種配分など割り切ることもできなくはないと思うが (それも難しいだろうが) ,
いわゆる「日本人の性分」というか,心配症な気持ちすらも乗り越えてメジャー流を取り入れ結果を残してゆく,という姿勢に驚いた.

上記のような意思決定は,「日程や移動が過酷な MLB では心技体のうち "体" を一番ケアしないといけない」という考えに基づいていると黒田は本書で語っているが,
それではそんな MLB での 7 年間を経てやってきた日本ではどのようなルーティンワークを見せるのかも,私達が確認したいポイントのひとつになるといえよう.

本当に贅沢な話を言えば,メジャーリーグでの「絶対にファンが知り得ないようなエピソード」に欠ける点だけ物足りなかったかな,と思う.
もちろん,黒田のプロフェッショナルな姿勢を紹介するための本書であるかぎり,それを求めてはいけないのだけれども.
そういう意味では,ドジャースでの 4 年間キャッチボールのパートナーだったクレイトン・カーショーのエピソードは読み応えがあった.