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【#chibaLotte】里崎智也『非常識のすすめ』内容の濃さに脱帽!

いきなりですがベイスターズではない話題. 「面白い」と耳にしてはいたが,想像以上であった.脱帽.

何が凄いって,まず内容が濃いのである. 普通,引退してすぐに野球選手が出す書籍は,新書かそれに準ずる程度の分量で,しかも文字も結構大きかったりする. 自分が小学生の時,引退してすぐの星野伸之の『真っ向勝負のスローカーブ』に感銘を受けたが,今になって開けば確かに小学生でもなんとか読めるような密度だったし,だからこそ心に残っているのだと思う. (もちろん,そのレベルでも小学生を開眼させる面白さを詰め込めたのも凄いのだが) 『非常識のすすめ』は違う.徹頭徹尾論理的に話が進み,里崎独自音視点で野球を,打撃を,捕手を,投手を,そしてそれ以外のことを語ってゆく.

頭が良いな,と思ったのは,「どうしたら投手は球速が上がるか」,「どうやったら勝負強い打者になるか」という,ひと通りに答えが決まらない命題にも,納得できるかなり精度の高い回答と理由を用意し,端的な言葉で答えられているという点である. 高校生の時,亡き私の父が WBC を観ながら「なんだあの捕手,何も考えてないで打席立ってる.頭は帽子を載せるため!」と言っていたのを思い出したが,その裏には明確な理由付けに基づいた「当たるも八卦・当たらぬも八卦打法」があったのだった. 自分も「打撃の良い捕手」というイメージで長いこと里崎を見ていたので,この本を読んで「もっと里崎の現役時代を堪能すればよかったなぁ」と思わざるを得なかった.

様々な野球選手に具体的に名前を出して言及しているので,その点も読み応え十分である. 面白いのは,久保康友とサイン違いの言い合いをした話とか,唐川侑己が殻を抜け出しきれない点など,比較的後ろ向きな話も遠慮なく書いてあること.長い間チーム全体のことを見ていた人間ならではの視点である.

商魂というか,商売センスがあるのも注目したい. 千葉マリンのリボンビジョンの提案をしたのが里崎だというのは有名な話だが,捕手用防具の胸の部分にメーカーのマークを入れたのも里崎が最初というのは初めて知った.

全体を通して,ここまで考える選手だったんだな,というのは本当に想像以上だったし,他球団のファンだから知らなかったけど本当にもったいなかったなぁという気持ち. 最近 MLB では,野球未経験の GM が元選手を GM 補佐として迎え入れ,自分に欠けている経験を補おうとするという例が増えており,日本でも稲葉篤紀北川博敏などが似たような立場で球団に残る例が増えている. 里崎も千葉ロッテスペシャルアドバイザーとしての命を受けているとのことだ.今後,どんな方向にアクションを打ってくるのか,非常に楽しみにさせてくれる一冊であった.